ブログ

2022.12.08

ごったましいガイドとゆく高千穂旅行記~2日目~

翌日は朝冷えがする中、少し早起きをして坂の多い高千穂の町を30分ほど散策しました。人口1万1千人の町にコロナ前は年間100万人を超える観光客が押し寄せていたそうです。お陰で税収が潤っていたのか、道路や道路わきの石垣も整備が行き届いた清楚な街並みで、街道わきには神楽で踊る主役たちの人形や銅像が各所に立っており、町の活気に一役買っていました。

また興梠(こおろぎ)姓の商店が目立ち、この姓は唯一高千穂からの由来だそうです。他に宮崎で多いのは甲斐(かい)姓で、そのため小学校では下の名前で呼び合うのだと、たまたまここの出身だったガイドさんが教えてくれました。

本日最初の観光の国見ケ丘展望台に行くために朝9時にバスに乗り込みました。ガイドさんは、「宿のお見送りの人数に、こんな大人数は初めて!」と驚き、女将さんや従業員の方たちの絶妙な脇と肘の曲げ具合での由緒正しい手振りの様を見るなり、皆さんも皇族になられた気持ちでお返ししてください、と朝から絶好調の彼女に指導され、手を優雅に振り返しながら癒しの宿を後にしました。

10数分後に到着した国見ヶ丘は、のちに阿蘇大明神と呼ばれる神武天皇の孫の健磐龍命(タケイワタツノミコト)が 九州統治の際に立ち寄って国見をされたという伝説の丘です。標高513mの展望台から高千穂盆地が一望できて雲海の名所として有名なのですが、最近では天気が良くても滅多なことでは拝めないようです。

私たちは農作物が朝霜でやられないように農家の人が煙を出して守っている雲海もどきの風景を見ることになりました。蕎麦焼酎で有名な雲海もこの絶景スポットから取った銘柄だそうです。雲り気味の天気だったので阿蘇の涅槃像は観られませんでしたが、天孫降臨されたニニギノミコトが千の稲穂をもってこの高地に降りて地上を視察された皇族気分を味わうことが出来ました。

あとは午前中に、この旅行のメインである天岩戸神社と天安河原見学を残すだけになりました。パワースポットをこれから訪ねるにあたって、ガイドさんによる健康チェックと対処法の講義が始まりました。まずは両手をパチンと叩いて、手のひらの状態を診ます。全体が白いのは大変良くないので、これから彼女の話にしっかり拍手で答えれば良いそうです。指先だけが赤い人は、これは心配なく、ただ興奮しているだけで、色がどす黒い人はこれも心配はなく、しっかり手を洗って下さいとのことでした。

また昨日訪れた高千穂神社の「鎮石」に手をかざして霊感を感じた人は、これから行くパワースポットでも感じやすく、そういう人は親指の腹側のIP関節で端が閉じた輪になった目のような形の仏眼(仏心紋)の持ち主らしいです。有無を挙手で調べると、私たちには仏眼の持ち主が多く、特に霊感が強い両母指の持ち主が数人おられました。

素晴らしい能力者と称賛される傍らで、そうでない人が寂しそうになっているのを見兼ねて、仏眼でない人も心配はいりません、ボールペンでちょちょっと付け加えて輪を完成させれば大丈夫とのアドバイスがありました。信じるも信じないも貴方次第の話でしたが、笑いが絶えないままバスは天岩戸神社の西本宮に到着しました。

天照大御神がお隠れになった天岩戸をご神体として祭っている神社なので、社殿には本殿はなく拝殿のみです。天岩戸は高さ8m、幅9m、緑深き対岸の崖壁に鎮座して、左右に20mの七五三のしめ縄が張ってありました。遙拝所での写真は禁止されているので目に焼き付けるしかありません。

岩戸川を挟んでの対岸にむかっての礼拝ですが、とても大きなご神体ということがわかります。境内にも立派なご神木がそびえて立っていて、実が鈴の形になる「おがたまの木」で、若き神職から神楽で鈿女が舞うときに使われるとの説明があり、昨夜の夜神楽で聞いた鈴の音が甦りました。

西本宮を裏門から抜け、足元が険しい遊歩道を川岸へ下りながら、対向する人とすれ違いざまに川に落ちないように注意して10分ほど歩くと、太鼓橋に差し掛かりました。この付近からパワーを感じる人は無言で神妙になっていくそうです。

橋を渡って最初の左カーブを曲がると、有名な天安河原(あまのやすがわら)と仰慕ヶ窟(きょうぼがいわや)が見えてきました。八百万の神々が天照大神のお隠れになったあとの暗黒の世界をどうしようかと集まられた場所です。光と影が絶妙に混じりあって岩戸川の流れと共に神聖な時間が流れているようでした。

数多くの人々の願いが込められた石積みが並んでいましたが、先月のマンナドルによって全て吹き飛ばされたそうです。しかし、解禁後のたった3週間足らずで、この数えきれない状態にまで復活したということで、多くの人々が一心に行う業もとても神秘的なものに思えてきました。

元来た道を戻って、岩戸を放り投げようとしている手力男の戸取像の傍に集まった我々は、ぶつけられないようにそっとバスに乗り込みました。この2日間を興味深く観光させて戴いた高千穂に感謝しながら、延岡にある国技館という昼食会場を目指しました。小腹がすき始めたせいか、バスは心なしかスピードを上げ気味になったところで、ガイドさんクイズ、「手力男が振り上げた岩戸は遠くに投げられましたが、どこまで届いたでしょうか」。

これにはすぐに複数の人から正解が出て、長野県の戸隠山まで飛んだとのことです。彼女から「凄いですね!」。昼食前で力が入り難い我々に同意させたいのでしょう、「凄いと思いませんか!」が連発されました。なんとも神話の世界観を感じました。

人口12万人の県内3番目に大きい水郷の町で知られる延岡は、サランラップやポケット調味料のマジックカットで大きくなった旭化成が起業した町です。毎年、全国800人の新入社員が延岡で初期研修を行っているとのことです。整形外科的にはPTH製剤などの薬が馴染みなのですが、その話は出ず、西日本で有名なドラッグストアのコスモスも延岡からの起業したことが紹介されました。

地元のあゆの塩焼きと伊勢海老のお造りとみそ汁が出て、お酒を誘う昼食を堪能したあと、バスは一路シーガイアに向けて走り出しました。まもなくガイドさんからは荷物にならないお土産が披露されました。ほろ酔い気分のなか、プロらしい心地よい唄声が響きます。本来は神楽と同様に33番まであるので、もっと続けて欲しかったのですが、これ以上は唄わない、書かない方が適切なようです。

≪高千穂神楽せり唄≫
♪~こよさ夜神楽にゃ せろとて来たが サイナー   せらにゃそこのけ わしがせる ノンノコサイサイ ハ ヨイヨイサッサ ヨイサッサ ヨイヨイサッサ ヨイサッサ~♪
♪~こよさ夜神楽は十二の干支で サイナー   飾りたてたる かみ神楽 ノンノコサイサイ ハ ヨイヨイサッサ ヨイサッサ ヨイヨイサッサ ヨイサッサ~♪

長々と拙文にお付き合い戴いて有難うございました。